次へ2012/01/23 良い(+1 pnt)by 2621
「ひと夏の、不思議な体験」といったコンセプトで見ると、実に上質な作品であるように思います。
特に最初から目的があるわけでもなく、表立った非常事態に見舞われている訳でもなく、飽くまで「日常の中、ちょっとした出会い」にすぎない点がポイントですね。
都会から田舎に引っ越してきたとある姉妹は、不思議な出会いを経験することになります。
それもその後の人生に大きく関わるような大規模な話ではなく、ふとしたときに思い出して「あれは一体何だったんだろう?」と振り返るような、淡く儚い出会いであります。
トトロの詳しい生態などについては、もちろん作中で語られることはありませんでした。
それが言うまでもなくかえってトトロの神秘性を際立たせ、「もしかしたら、あなたにもこんな出会いがあるかもよ!?」と言ったさり気ないメッセージを感じます。
本作品の舞台となっている田舎は、高度経済成長によって失われる前の「豊かさ」に溢れた場所であり、それによって人々の表情も活き活きしています。
また、この作品はかの「火垂るの墓」と同時上映された上に、同一のキャッチコピーが存在します。
「忘れ物を、届けにきました」というものですが、色々と感慨深いです。
作品のテーマ、雰囲気、結末などは見ていて痛々しいほどに正反対(わざと対比して製作されたのかと思うほどに)です。
しかし二つとも、見事に現代の人間に忘れ物を届けることが目的なのですね。
こちらの「忘れ物」は、物質的ではない「本当の豊かさ」でしょうか。
火垂るの墓における「忘れ物」と、こちらの作品における「忘れ物」は、もしかすると正反対にして全く同じなのかもしれません。
どちらも事実を淡々とつづった日記のような話の構成になっていることから、それがうかがえます。
「忘れ物」自体は同一であり、二つの作品で「側面」を変えたに過ぎないのかもしれませんね。
気になった点といえば、ジブリ作品に共通することですが「子どもの良さを全面的に押し出した感じ」でしょうか。
「子どものときにだけ訪れる不思議な出会い」という主題歌のフレーズにもあるように、ジブリ作品は一貫して子どもの持つ無限大の可能性を強調した描写がなされます。
伝えたいことは痛いほどに理解できるのですが、ある程度年齢を重ねた大人には複雑な感想を抱きかねないのではないでしょうか。
とはいえ、この作品は大人も好意的に描写されているため、自分は今も楽しく視聴することができます。
また、上記のとおり「ひと夏の体験」をモチーフにしたとはいえ、「起承転結の刺激がいまいち足りない」という点も否定はできません。
(これもジブリ作品における欠点としてよく挙げられていることですが…。)
つまらない人にはかなりつまらない作品として終わってしまうのが否めないですが、それでも視聴し終えた後、「忘れ物」が届いたのではないでしょうか。
そう、サツキの手に、いつの間にかドングリが握られていたように、「何か」が心に残ればいいのではないでしょうか。
サツキとメイの母親の元に、無事にトウモロコシが届いたように、視聴者が「忘れ物」を思い出せたら、この作品の意味は十分にあったように思います。
トトロはもしかしたら今も、雨の降る日、傘を持ってバス停に立っているのかもしれません。
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